不動産業界におけるコンプライアンスチェックの重要性を考える/第五十一回
不動産IT技術研究所
さて、前回は「不動産会社社員に必要なITスキル」をテーマにお話ししました。第二回はもう少し具体的に掘り下げて「不動産システム」についてお話ししようと思います。
これを読んでいる方の中には既に不動産システムを導入している会社の方もいれば、これから検討する方もいらっしゃると思います。システムの見直しや導入の際に、本記事が多少でもお役にたてば幸いです。
不動産システムには様々なものがありますが、特に多いのは賃貸仲介システム、賃貸管理システム、売買仲介システムです。ほかにもホームページ支援システムや各種不動産ポータルサイト(アットホームやSUUMOやホームズ、マイナビ賃貸など)への物件公開のシステムなどもあります。ここでは賃貸仲介システム、賃貸管理システムの所謂賃貸系のシステムについてご紹介します。
賃貸仲介システムは、大手FC(アパマンショップ、エイブル、ピタットハウス、ミニミニなど)の場合は本部が提供している営業支援システムがそれに該当します。ほかにもベンダーが販売しているシステムがあります。主な機能としては以下のようなものを備えています。
1、物件情報検索
2、物件資料作成
3、顧客管理
4、契約書や重要事項説明書などの契約書類作成機能
5、仲介売上管理
6、各種不動産ポータルサイトへのデータ連動
また、最近ではこれにグループウェアのような機能を追加したもの(掲示板、スケジュール表、ワークフローなど)も出てきており、多店舗間でのリアルタイムな情報の共有や営業の日報などもみることができるようになってきています。
賃貸管理システムは、様々なベンダーが提供しています。賃貸管理システムに含まれる機能は主に以下のようなものです。
1、家主、物件、契約者管理
2、家賃管理(請求・入金・送金)
3、契約・更新管理
4、解約管理
5、修繕工事管理
6、各種不動産ポータルサイトへのデータ連動
1~6は、今や標準機能ですので、これらの機能がついていないシステムはまずないでしょう。そして、これからの不動産管理システムには、これらのデータを収支計画や事業計画、また家主向けの提案などにシステムのデータが活用できるような機能が必要かもしれません。
システムの導入を検討する際、みなさんは何を検討にされるでしょうか。まずは、以下のような項目を基準に検討することが多いのではないでしょうか。
・導入コスト
・ランニングコスト
・業務の効率化
システムの適正コストというのはなかなか難しい問題です。例えば賃貸管理システムの場合、営業支援のシステムではありませんので、いかにコスト削減に貢献し、さらに管理サービスの付加価値を高めるかという視点が必要になります。
例えば簡単な方法として、システム導入前にかかっていたコスト(主に人件費になるかと思います。)を算出し、1部屋当たりのコストを割り出します。
そのコストを何割減らすかを目標として設定し、システムの導入コストとランニングコストと比較してみるとよいとおもいます。そもそも管理戸数があまり多くないのであれば、EXCEL等を活用することで、管理システムの基本機能のようなこともできますので、無理にシステムを入れる必要はないと考えます。
業務の効率化ですが、よくシステムを入れれば効率的になるとすぐに考える方がいらっしゃいますが、そうではありません。システムを導入する際に、そもそも今の業務の運用に無駄がないか、また業務手順やフローをこの機会に文書化して見直してみるのがよいと思います。そうすることによって、無駄な手順が明らかになり、その無駄を省いた手順をシステム化することで一層の効率化が図れます。
また、ファイルサーバーなどを自社のサーバールーム(あまりサーバールームを持っている不動産会社はないかもしれませんが)をフロアーに設置している会社は、ベンダーが提供しているクラウドなどのサービスに移行し、管理の手間をなくしてしまうというのも一つの効率化の手段だと思います。
不動産会社にいるシステム担当者の役割は何でしょうか。筆者もシステム担当者として何年か不動産管理会社で働いていました。システム担当者にありがちなのは、ITには興味あるが不動産には興味がないといった方です。こういう方に限って、自分は与えられた仕事を専門家として頑張っているのに、会社にあまり評価されていないと考えがちな方が多いように思います。
しかしながら、厳しいことを言うと業務が理解できない人間がシステムの効果をわかるはずがありません。できれば、宅地建物取引士を取得するぐらいに不動産の勉強をして頂きたいです。
また、これからの時代はデータ分析能力が重要です。不動産の現場では営業や管理の担当者は、日常の業務に追われています。そのためにもEXCELや不動産システムの機能をフル活用して、データの分析資料を作成できるようになって、会社をアシストしてください。
経営陣にささるような分析資料を作ることができれば、あなたの社内価値は格段にあがるはずです。システムを安定に稼働させるためのハードウェアの維持管理やネットワーク機器の設定などは業者に任せればよいのです。
さて、おそらく不動産会社の方があまりやらないのは、この導入後の効果測定というものではないでしょうか。効果測定をするためには4でもご説明した通り、導入効果の目標を定めなければなりません。
その上で、導入初年度、3年目、5年目といった区切りで導入効果を測定してみてください。そして目標に達成できなかった場合、業務にまだ無駄はないかなどの原因を検討してください。またベンダーに相談するのもよいでしょう。