2020年不動産業界の振り返り/第三十一回

不動産コラム

2020年不動産業界の振り返り/第三十一回

今年も残すところあとわずか、2020年に不動産業界で起きた出来事について振り返ります。
不動産業界にとどまらず、今年は1年を通してコロナに関する話題一色でした。
そこで、今回はあえてコロナ以外のニュース・出来事に焦点を当て、2020年が不動産業界にとってどういった年だったのかを考えてみたいと思います。

著者:不動産IT技術研究会

改正民法施行

今年4月、これまでの民法が改正され、新しい民法が施行されました。
改正が閣議決定された2015年当時、「120年ぶりの大改正」と大きな話題を呼んでいたことを覚えている方も多いでしょう。しかし、施行年である今年にいたっては、あまり話題にならずひっそりと施行されたように感じます。

あまり注目されなかった改正民法ですが、不動産賃貸業界をはじめ、不動産業にも大きな影響があることはご存知でしょう。
おさらいになりますが、不動産賃貸業にとって重要なのは以下の4点です。

・敷金返還の明文化
・一部滅失等による賃料減額
・原状回復の義務範囲の明文化
・連帯保証人の保護

これまで曖昧になっていた契約内容を明確に定義することで、トラブルを避ける狙いがあります。

スルガ銀行、シェアハウスを手放せば借金帳消しに

スルガ銀行、シェアハウスを手放せば借金帳消しに

2018年、シェアハウスメーカーの経営破綻から端を発し、審査書類の改ざんや不正融資といった不正が明るみになったことで、融資をしていたスルガ銀行にも責任を問われていた問題について、2020年3月に大きな動きがありました。

それは、シェアハウスを手放せば借金を帳消しにするという発表です。
所有者がシェアハウスを物納して借金を相殺するというもので、シェアハウス問題に区切りを付けるかたちになります。

しかし、借金を返済することができず早々に自己破産を行っていた人など、必ずしも皆が納得するようなかたちではありません。完全決着にはまだまだ時間がかかりそうです。

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の制定

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の制定

2020年3月、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が閣議決定され、6月に公布、2021年6月までに施行されることが決定しました。先述したシェアハウスメーカーの経営破綻等によって、物件を一括で借り上げて家賃を保証するサブリース事業のリスクが世間一般にも知られるようになりました。

勧誘時に契約の内容説明が不十分なケースや、管理業務内容や責任の所在が不明なケースがあり、当初「家賃保証○○年」と謳われていた契約であっても、数年で賃料減額が行われてしまい物件オーナーが泣き寝入りしてしまう、赤字経営を余儀なくされてしまうといったトラブルも数多く起こっていました。

その一方で、物件オーナーの高齢化などによって、適正なサブリースを定義する必要性が高まっています。国土交通省は、サブリース事業者を含めた賃貸管理事業者に、賃貸住宅管理業の登録を義務化(現在は任意)し、管理住宅契約やサブリースの借り上げ契約の重要事項説明の義務に違反した場合は、業務停止命令や罰金といった罰則を設けることを発表しました(管理戸数200戸未満は登録免除の予定)。

リースバック事業への参入事業者増

リースバック事業への参入事業者増

2020年に入り、住宅ビルダーや大手不動産会社のリースバック事業参入が相次いでいます。自宅を売却した後も賃貸として住み続けることができるリースバックは、高齢者世帯の老後資金確保など、今後拡大傾向にあるシニア市場に対して大きな需要が見込まれています。人口減少による新築市場の縮小なども、新築物件を取り扱っていた企業の事業参入に拍車をかけているようです。

消費者・事業者双方が大きな期待を寄せているリースバックですが、市場価格よりも安く物件を買い取られることや、賃用を高く設定されるケース、定期借家家契約によって契約の更新を断られ退去を求められるといったトラブルも発生しています。政府は、こういった現状を踏まえ、リースバックの売却価格の決め方や契約内容を明確化するガイドラインを令和2年度中にまとめる方針を発表しました。

不動産テックカオスマップ第6版発表

2020年6月、不動産テック協会は「不動産テックカオスマップ 第6版」を発表しました。
今回掲載されたサービスの数は352で、2016年に発表された初版の80と比べると、わずか4年で4倍以上と、サービスが増加していることが分かります。

コロナの影響下のなかで、非対面や遠隔での接客・提案ツールなども注目されており、不動産テックサービスが業界に普及する追い風になっているようです。様々な不動産テックサービスが生まれている一方で、サービス自体が終了しているものも多数あります。不動産事業者自身も、常に最新の情報を収集し、自社にマッチしたサービスはどういったものなのかを考えることが重要です。

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