賃貸業務を支援する不動産テック<不動産管理ソフト・コミュニケーションサービス編>/第三十三回

不動産コラム

不動産とテクノロジーを掛け合わせた「不動産テック」という言葉を業界内外で耳にするようになりました。
様々な業界や産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が進むなかで、アナログな商慣習が残る不動産業界は、テクノロジーによる“のびしろ”がとても大きいと考えられています。
では、不動産テックが普及することにより、賃貸業界だけではなく、ひいては不動産業界にどのような影響があるのでしょうか。今回は、賃貸業界の不動産テック、なかでも業務支援という分野にフォーカスして考えてみたいと思います。

著者:不動産IT技術研究会

不動産テックの定義と意義

そもそも、不動産テックとはどういったものなのでしょうか。
(一社)不動産テック協会では、不動産テックの定義を
“不動産×テクノロジーの略であり、テクノロジーの力によって、不動産に関わる業界課題や従来の商習慣を変えようとする価値や仕組みのこと。”(参照:https://retechjapan.org/retech-map/)としています。

不動産業界では、FAXでの情報交換や紙での書類管理が主流であることから、事業従事者のみならず一般の顧客に対しても機会損失や非効率といった弊害が生まれていました。

不動産テックは、旧態依然とした不動産業をテクノロジーによって変革させることを目的とした潮流です。テクノロジーによって、古い慣習がITを基準としたレベルに達するだけではなく、最先端の技術によって不動産取引や不動産業務を、より円滑に便利にすることを目的としています。

賃貸業界で多い煩雑な業務とは

賃貸業界にはどのような業務に負荷がかかっているのでしょうか。
2019年、国土交通省が発表した「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」を見てみましょう。同調査は、不動産管理業務のなかで、どのような業務が多いのか、適正な管理業務を把握するために行われたアンケートです。
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000198.html

「受託管理契約において実施している業務の内容と実施方法について」という問いに関して、「苦情対応」(89.1%)「敷金精算・原状回復」(86.6%)「契約更新」(84.3%)、「空室管理」(82.9%)といった業務が多くの割合を占めていました。

入居者やオーナーとのコミュニケーションには未だに電話や郵送物が活用されているケースや、入居者管理における契約書、原状回復時の見積書を紙で管理している企業も多いでしょう。

特に煩雑な業務が多い賃貸管理の現場では、こういった「見えないコスト」への意識がおろそかになってしまいがちです。しかし、テクノロジーを活用することで大きな業務効率化を見込むことができるのです。

賃貸業界の業務を支援する様々なテックサービス

賃貸業界の業務を支援する様々なテックサービス

賃貸管理業務を支援するサービスを様々な視点から紹介します。

賃貸管理業務の基盤「賃貸管理システム」

「不動産テック」という言葉が生まれる前から、賃貸管理業務を支える存在として、管理会社を中心に導入されているのが「賃貸管理システム」です。

賃貸管理システムは、賃貸管理物件の情報を集約することを始め、修繕履歴の保存、入居者の契約情報・更新時期の把握、クレーム履歴や帳票管理など様々な機能が備わっています。

家賃の入金管理や消込作業といった、「コアな業務ではないがミスが許されない」業務の自動化や、各種サービスと連動することでウェブサイトとの物件の連動表示やポータルサイトへの物件掲載なども完結させることができるものもあります。

ペーパーレスにもつながる「コミュニケーションサービス」

先述したアンケートにもあった「苦情対応」といった部分で注目されているのがチャット機能などを活用した「コミュニケーションツール」です。

これまで、入居者からの問い合わせは電話が主流で、営業時間外や定休日などの問い合わせには対応することが難しく、一次対応ができないことで二次クレームの原因となってしまうケースが多々ありました。また、対応が遅いといった不満が募ることで、退去の一因になってしまう可能性もありました。

「コミュニケーションサービス」は、入居者にはスマホアプリとして提供され、管理会社とのコミュニケーションを円滑に行うことができます。チャット機能の利点は、気軽に問い合わせられるという入居者の心的ハードルを低くすることだけではありません。スマホで撮影した写真を添付することができるため、より具体的に相談内容や設備の不具合などを伝えることができます。

また、対オーナーとのコミュニケーションも可能なサービスもあり、月々の収支報告書などもアプリ上で完結することができるため、書類の封入や郵送コスト削減や入居者の満足度向上だけではなく、ペーパーレスにも繋がっています。

オーナーとの交渉に重要な「賃料査定サービス」

オーナーとの交渉に重要な「賃料査定サービス」

先述のアンケート結果の「空室管理」も、管理会社に大きな負担を与えています。空室が発生すると、オーナーは早期に次の入居者を決めて欲しいと要望します。

あまりにも長期間空室になったままでは、「客付け能力が無い管理会社」というイメージを持たれてしまい、管理委託のリプレイスといった事態を引き起こしかねません。

ここで、入居が決まらない理由としていくつかの原因が考えられるのですが、その大きな部分として家賃が適正ではないことが挙げられます。そういった際に活用されるのが「賃料査定サービス」です。これまで管理会社がオーナーとの家賃交渉を行うには、長年の勘や経験による値付けが主流でした。そのため、賃料の根拠を示すことができず、オーナーの要望を優先した家賃設定を行わざるを得ないことも少なくありませんでした。

「賃料査定サービス」は対象の物件の周辺の賃料情報や、設備の有無による賃料への影響度合い、過去から現在に至るまでの賃料の変動情報と行ったビッグデータを集積し、AI(人工知能)による分析などを介して算出される適正な賃料を知ることができます。

管理会社側としても、「賃料査定サービス」が算出した適正賃料であるという正当性を持ってオーナーに提示することができるため、より簡潔に交渉が進み、早期の入居を実現することができるのです。

まとめ

賃貸管理における不動産テックの活用シーンは今回紹介したものだけではなく、様々な分野に広がっています。
できたばかりのサービスも多く、実際に利用した管理会社からの意見や要望を聞きたいと考えている不動産テック会社がほとんどです。自社の業務効率化を目的とすることはもちろんですが、業界を良くしていくための投資としてもテックサービスの活用を検討してはいかがでしょうか。

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