不動産業界におけるコンプライアンスチェックの重要性を考える/第五十一回
不動産IT技術研究所
第五回となる今回は「IT利用した不動産賃貸系の効率化」というテーマでお話ししたいと思います。
筆者は以前、不動産管理会社のシステム部門の責任者という立場で、システム改善をテーマとして仕事をしておりました。
その時に感じたこと、経験も踏まえてお話しをしていきます。
以前に所属しておりました不動産管理会社の社長に言われた指示です。
シンプルな指示です。システム部門責任者という立場からすると大変やりがいのある命題を与えられたわけですが、同時にこれは大変な作業を指示されてしまったという思いもありました。
「賃貸の数字」、さてそれは何でしょうか。
売上・賃貸営業活動・賃貸管理業務の3つに分けて以下に挙げてみます。
経営者が欲しい、知りたい数字というものがあります。システム部門は経営者と話をしてそれを定義します。
①売上構成の数字
・家賃収入(自社物件やサブリースの場合)
・仲介手数料
・広告料
・保険料マージン等の各種マージン
・管理手数料
・工事売上 など
②賃貸営業活動の数字
・反響数(各種ポータルサイドからの反響など)
・来店数
・申込数
・成約数 など
③賃貸管理業務の数字
・オーナー数
・管理物件数
・空室数
・リフォーム契約数 など
さて、次に2で挙げた数字はどこから持ってくればよいのでしょうか。また、通常はどのように管理されているのでしょうか。
筆者が在籍していた会社では、EXCELとシステムで管理していました。
-EXCEL
EXCELは、フォーム等が作成しやすく特に難しい操作知識も不要なため、数字を管理するツールとしては大変利用しやすいですが、その反面、誰でもデータが操作できてしまうなどのデメリットもあります。また不特定多数が入力できる場合はそもそも数字の信頼性に課題が残ります。
-システム
システムから抽出したデータは入力者が限定されており(限定されていない場合はルールを見直してみてください)、且つ入力ルールや数字の計上ルールも決まっており、EXCELと比較すると信頼性の高いデータといえるでしょう。
データについては今一度以下の点を確認してみてください。
・入力ルールは定められているか
・計上基準は定められているか
・入力者は限定されているか
3を踏まえデータが準備できたら、集計・分析方法を検討します。分析項目については、経営企画など経営陣の意向を収集できる部門または担当者と相談し、項目を決定しましょう。
情報システム担当者がEXCELの関数やピボットテーブル、マクロをバリバリ使いこなせるのであれば、EXCELでシートを作成すればよいですが、必ずしもそうではない場合もあります。その場合、まずは取引のあるシステムベンダーに相談したり、市販のデータウェアハウスや分析ツールを検討するのもよいと思います。資金が潤沢にある会社の方は、ベンダーと相談して集計・分析シートの自動生成システムを作ってもらうのもよいと思います。
集計・分析シートは数字だけではなく、視覚的にわかりやすくするために表やグラフの利用を検討しましょう。
4で集計・分析シートが作成できたら、これを共有する方法を検討します。
筆者は当時、日々の情報と月次の情報に分けて、グループウェアに掲載し全拠点がみることができるようにしました。そしてこれを情報システムの重要な業務に位置付けました。100点とは言いませんが、情報システム室の意義は多少経営陣に感じて頂けたのではないかと思っています。
効率化という観点が多少薄い内容になってしまいましたが、必要な数字の収集と集計・分析をスムーズに行うことができれば、素早く且つ正確な市場ニーズや営業成績、経営状況のキャッチアップができると思います。