2021年不動産業界の振り返り/第三十七回

不動産コラム

2021年不動産業界の振り返り/第三十七回

2021年も日本は新型コロナウイルスの話題が尽きませんでした。それは不動産業界も同様です。

そこで昨年の「2020年不動産業界の振り返り」と同様に、あえてコロナの話題以外で2021年に起きた不動産業界の出来事について振り返りたいと思います。

アパートの屋外階段崩落事故。求められる安全性

アパートの屋外階段崩落事故。求められる安全性

2021年4月、東京都八王子でアパートの屋外階段が崩落し、住人の女性が転落死する事故が発生しました。事故が起きたのはまだ築8年のアパートで、神奈川県の施工業者によるずさんな工事が原因だったことが分かりました。

同業者への責任追及が及ぶなかで施工業者は事故後1カ月後に自己破産を申請、警視庁は現在も業務上過失致死容疑などで捜査を続けています。この事故を受けて、国土交通省が再発防止に向けた規則や告示の改定を提示し、アパート建築における規制強化の動きが進められています。

具体的な再発防止策として「設計時における防腐措置などの内容の明確化」「工事監理および完了検査時における屋外階段のチェック内容の明確化」「適切な維持管理の確保」などが挙げられています。

OYO、賃貸事業を霞ヶ関キャピタルに承継

2021年4月、OYO Japanは「OYO LIFE」のブランド名でサービスを提供していた不動産賃貸事業を霞ヶ関キャピタルが新たに設立したKC Technologiesに事業承継することを発表しました。

2019年3月から開始した同サービスは、スマホ上で簡単に入居手続きが完結するプラットフォームを運営し、初期費用不要で家具付きの物件に住むことができることをコンセプトに賃貸業界のDX化を標榜していました。

管理戸数100万戸を目標に全国の賃貸物件を借り上げ、一時は管理戸数が8,000戸にもなったと報じられています。しかし、高掴みしたサブリース賃料がランニングコストとして肥大する一方で入居者の集客に苦戦するなど課題は多かったようです。

インド発・不動産テックの黒船と呼ばれたOYOですが、今後日本国内ではホテルの宿泊予約サービスや旅館のコンサルティング事業に注力するとしています。

事故物件の告知義務ガイドラインが策定

事故物件の告知義務ガイドラインが策定

2021年10月、国土交通省は「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を発表しました。心理的瑕疵物件、いわゆる事故物件における告知義務について、これまでは勝手な認識や企業ごとの対応にばらつきがありました。

そういった背景から国土交通省は事故物件告知義務のガイドラインを下記のように発表しました。

■告知義務がないケース
・老衰や病気による病死などの自然死
・自宅の階段からの転落や入浴中の溺死など、日常生活における不慮の事故
・日常生活で通常使用しない集合住宅の共用部分での死亡

■告知義務があるケース(目安として事故発生より3年間)
・自殺・殺人
・自然死でも、発見までに時間がかかり、特殊清掃や大規模なリフォームが行われた場合
・借主・買主から問われた場合

明確な告知のガイドラインが決まったことにより、これまでリスクの可能性があるとして敬遠されていた高齢者の受け入れなどが進むことに期待が寄せられています。

火災保険の不正申請で逮捕者

2021年10月、千葉県のリフォーム会社社長、東京都の不動産会社社長と従業員の3人が弁護士法違反として逮捕されました。

逮捕容疑は、弁護士資格がないにも関わらず、マンション所有者に代わって、設備が台風によって破損したとして、保険会社に火災保険を請求した疑いです。通常、保険申請を目的とした物件調査やレポート資料の作成などには資格は不要です。しかし、今回の事件のように、代理で申請を行うことが法律業務に当たるため、弁護士法に抵触しました。

近年、多発する自然災害などを背景に、火災保険や地震保険の申請をコンサルする企業が増えています。そういった中で、被災内容の偽装や被害の誇大申告など、不正受給と見なされるような行為も横行しているようです。

保険会社各社も保険金の不正請求を防ぐために、実施調査や審査の厳格化などの動きも活発になってきています。

不動産テックカオスマップ第7版を発表

2021年7月、不動産テック協会が昨年に引き続き「不動産テックカオスマップ 第7版」を発表しました。

第7版で掲載された不動産テックサービスは、過去最多の446サービスで、第6版の352から94も増加しています。VR・AR技術を活用の分野では、遠隔や非対面による物件紹介ニーズ、スペースシェアではリモートワークやテレワーク需要などといった、コロナ禍におけるニューノーマルな価値や利便性を求める声に応える形でのサービスが増加したようです。

このような、不動産業界のDX化を推進させる動きは、民間企業だけにとどまりません。
国交省は不動産に共通のコードを付与し、不動産データの連携や蓄積、活用を目的とした「不動産ID」のルール整備を進め、2022年度から順次運用の開始を目指しています。

長くアナログと呼ばれてきた不動産業界ですが、徐々に変化の兆しが見え始めています。

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