不動産業界におけるコンプライアンスチェックの重要性を考える/第五十一回
不動産IT技術研究所
これまで紹介してきた不動産業界に向けたテクノロジー・DXサービス
・不動産管理ソフト・コミュニケーションサービス
・電子契約
・スペースシェアリング
・AR・VR
に続き、今回はスマートホームやスマート家電といったサービスの根本となるIoT技術に注目し、不動産業界や賃貸業界でどのように活用されていくのか、その展望について考えてみます。
IoTという言葉が、世の中でも広く聞かれるようになってきましたが、改めてどういった技術なのか、言葉の意味や仕組みについて理解しましょう。
「IoT」とは、「Internet of things」の単語の頭文字をとった略称で、「モノのインターネット」と翻訳されます。
ここまではよく目に耳にする解説です。
では具体的に「モノのインターネット」とはどういったものなのでしょうか。
例えば、エアコンです。一般的なエアコンは、冷暖房や除湿機能に加えて、汚れを検知し自動で洗浄する機能など、昨今では様々な便利な機能が備わっているモデルが登場しています。
では、そのエアコンをIoT化すればどうなるのでしょうか。
重要な点は、IoT化した機器はインターネットを介して別の機器と繋がり、相互でデータ・情報をやりとりすることで、本来その機器だけでは難しいような動きや制御が可能になるということです。
エアコンがインターネットを介してスマートフォンと繋がることで、外出先からでもオン・オフが可能になります。また、スマートフォンに内蔵されたGPS機能を活用すれば「自宅まで1km以内に近づけば自動で電源が入る」といった設定も可能かもしれません。
マイクを内蔵したスマートスピーカーと繋がれば音声での操作が可能になり、温度計と繋がれば設定した温度を常に保つことで、留守中の子どもやペットに快適な空間を維持させることなども可能になります。
このように、IoTとは単にインターネットに接続されたモノを指すのではなく、他の機器やデバイスと繋がることで、さらに便利になる技術を指しています。
様々なモノ同士を繋げ便利にするIoTですが、活用される分野は人々の生活だけではありません。
例えば、工場内に設置されたセンサーのデータをインターネットで共有することで、遠隔で品質の管理をするといったものや、建設現場での安全性やセキュリティ面での活用など、様々な産業や職種で活用されています。後ほど紹介する不動産業界でも、IoT技術が活躍する余地がたくさんあります。
こういったIoTの市場ですが、日本ではこれから大きくなってくると考えられています。
IoT市場などを専門にリサーチ・コンサルティングを行っているMM総研が発表した「IoT技術の国内利用動向調査(2019年11月実施)」を見てみましょう。
同調査によると、2019年時点での日本国内のIoT市場規模は約6,100億円でした。これが2023年には約1兆9千億円となり、わずか5年で市場規模が3倍に拡大すると推測しています。
IoT技術に対するニーズは今後さらに加速していくと考えられており、様々な職種や産業での活用が模索されています。
IoT技術は、不動産業界でも注目され始め、様々なシーンや目的で活用が始まっています。どのような技術が、どのように活用されているのでしょうか。
スマートスピーカーやスマートライトなどIoT機器を導入した「スマートホーム」は、住まい探しをしている顧客や購入検討者への付加価値になり、他の物件との差別化を図ることができます。
また、IoT機器を導入することで、賃料にも影響があるようです。
2018年、大手アパートメーカーのレオパレスが、全国のひとり暮らしをしている入社5年目までの社会人男女計600名を対象に行った『「若手社会人のひとり暮らし」に関する意識・実態調査』の結果を公開しました。
同調査で、「IoT化された賃貸住宅に住んでみたいか」を尋ねたところ、『ぜひ住んでみたい(17.3%)』、『住んでみたい(29.5%)』と、約半数が『住んでみたい』という回答でした。
また、「IoT化された賃貸住宅にために現在の家賃にプラスしていくら払ってもよいか」という質問には、『1,000円以下(22.8%)』『5,000円(22.4%)』『3,000円(21.7%)』という結果でした。
賃料にいくらか上乗せしてでもIoT機器を活用したいと考えている入居検討者が一定数存在していることが分かります。
Q.IoT化された賃貸住宅に住むことができるなら、現在の家賃にプラスいくら払ってもよいと思いますか?
スマートロックとは、スマートフォンやICカードなどで解錠することができる鍵です。
鍵を紛失するリスクがないため小さい子どものいる家庭や防犯面・セキュリティ向上などに役立てられています。
スマートロックの機能として、一時的な解錠コードを第三者に任意で付与できるというものがあります。賃貸物件にスマートロックを導入しておけば、賃貸仲介会社が内見案内をする際、管理会社から解錠コードを付与してもらうことで、鍵の受け渡しなしで物件を案内することができます。
また、入退室のログを保存しておくこともできるため、顧客一人で内見をする「無人内見」も提供することが可能です。コロナ禍において、非対面・非接触が求められる中では、IoT機器を活用した無人サービスには高い需要が見込まれています。
一人暮らし高齢者の増加といった社会問題に対しても、IoT機器活用が進んでいます。
インターネットと繋がったスマートカメラを活用した見守り機能や、センサー機器による通報サービスにより万が一の駆けつけサービスなども提供されています。同様に、遠方にある空き家の管理においても、防犯面や近隣とのトラブルを未然に防ぐ手段としてIoT機器が活躍しています。
これまで紹介してきたように、IoT技術を活用した多種多様なサービスが様々な産業で生まれています。
今後、不動産業界でもIoTが導入された住宅がスタンダードになったり、業務上での活用の機会が増えたりする可能性は十分にあります。日々新しい変化を受け入れ、その変化に適応することが、これからの不動産プレイヤーに求められている姿勢なのです。