改正宅建業法でなにが変わる?期待される業界での変化とは【2022年5月】/第四十回

不動産コラム

改正宅建業法でなにが変わる?期待される業界での変化とは【2022年5月】/第四十回

2022年5月18日、宅地建物取引業法の改正法が施行されました。
不動産の賃貸や売買といった取引における重要事項説明書などの必要書類を電子化(電磁的方法)で対応することができるようにすることが目的です。
今回は、改正宅建業法で何が変わったのか。また、書類の電子化やDX化によって業界にどのような広がりやサービスの可能性があるのかなどについて考えてみます。

改正宅建業法のポイント

今回の宅建業法の改正に至った背景には、2021年9月に施行された「デジタル改革関連法」があります。同法律は、官民のデジタル化の促進や利便性の向上を目的としたITやデジタルの活用を推進するもので、非効率な手続きややりとりを廃して、効率的な経済成長や社会活動の円滑化を図っています。

2022年5月に改正された宅建業法のポイントは
・押印の廃止
・電磁的方法による書類の交付
の2点が挙げられます。

押印の廃止

重要事項説明書と不動産取引の契約締結時の交付書面(37条書面)の交付時に必要だった宅地建物取引士による押印が不要となり、記名の義務だけになりました。
デジタル庁の設置や日本経済全体で「脱ハンコ」「DX(デジタルフォーメンション)」の波が押し寄せるなかで、宅建業法もまさに時流に沿ったかたちの改正となりました。

電磁的方法による書類の交付

これまで紙面での交付が義務づけられていた書類が、電子メールやウェブページからのダウンロードなどによる交付ができるようになりました。
具体的には下記の書類が、電子交付可能になりました。
・媒介契約締結時書面
・指定流通機構(レインズ)への登録を証する書面
・重要事項説明書
・契約締結時書面(37条書面)
これらの契約締結においては、電子契約サービスなどを活用することで、より迅速に業務を進めることができるようになります。
不動産業界における電子契約に関しては、こちらの記事でも解説しています。
賃貸業務を支援する不動産テック<電子契約編>

改正宅建業法で何が変わる?

では、宅建業法が改正されたことで、具体的にどのような変化が起きるのでしょうか。
前項で紹介した2つの変更点の中でも、特に「電磁的方法による書類の交付」を活用することで、実務を行う不動産事業者に大きなメリットがあると考えられます。

印紙税・郵送費用といったコスト削減

これまで、売買契約書を書面で交付する際には、取引する物件の価格に沿った印紙を貼付しなければなりませんでした。
しかし、売買契約書を電子交付すれば、印紙税の納付義務がなくなります。頻繁に売買を行っている企業や高額の物件を取り扱っているケースでは、大きなコスト削減に繋がるでしょう。
また、書類を電子で交付することで、郵送のコストが発生しない点も日々たくさんの書類をやりとりしているケースでは見過ごせないポイントです。

取引の円滑化

電子交付することで、物理的な距離にとらわれず、即時に書類のやりとりができる点も、大きなメリットです。
郵送でのやりとりで数日間かかっていた業務も、数分で済ますことが可能になります。

書類の保管・保存コストの削減

顧客と締結した契約書や書面の保管に必要だったバインダーやそれらをまとめるロッカーなどのスペースも、電子化することで不要になります。
また、電子で保管した書類は一覧で保存され、時系列でのソートや必要な書類を検索することなども可能で、紙の書類よりもより効率的に業務を進めることができるでしょう。

改正宅建業法における注意点

不動産業界に大きな変化を与える今回の改正にあたり、国土交通省はいくつか注意点を「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明 実施マニュアル」で、「遵守すべき事項」と「留意すべき事項」の2種類に分けて紹介しています。

・顧客が利用予定のソフトウェア等に対応可能かどうかを確認する
・電子交付した書類は出力によって、紙で制作できるようになっている
・電子書面が改変されていないかどうかを確認することができる

などが、遵守すべき項目として設定されています。

・電子書面の見やすい端末を利用することを顧客に説明する
・電子書面の保存の必要性及び保存方法の説明

などが留意すべき点として挙げられています。
詳しくは国交省の資料を確認しましょう。

書面の電子化が賃貸業界に与える影響を考える

何度も述べてきたように、今回の宅建業法改正の大きなポイントは、電子によって書類を交付できるようになった点です。これにより、顧客と宅建士が実際に対面せずとも部屋探しから契約までを完結することが可能になりました。

オンライン内見や無人内覧といった部屋探しや内見業務の効率化するサービス、オンラインでの申込みやIT重説など、これまでも非対面や遠隔での不動産取引を実現させることを目標に掲げてきたサービスはたくさんありましたが、その実現を阻む最大の要因は、旧態依然とした商慣習をそのままに残した宅地建物取引業法でした。

今回の業法改正により、非対面や遠隔での不動産取引を行うための最後のピースがはまったと感じる事業者も多く、今後はよりスピーディーで顧客のニーズに応えることが他社との差別化になるかもしれません。

また、今回の宅建業法改正は、報道などでも大きく取り上げられたため、一般消費者も広く知ることとなったはずです。 そういった顧客に対してどのようなサービスを提供できるのかが、今後の不動産会社に求められているのではないでしょうか。

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