不動産業界におけるコンプライアンスチェックの重要性を考える/第五十一回
不動産IT技術研究所
不動産業界にとって2022年はどのような年だったのでしょうか。
まだまだ落ち着かないコロナ情勢なども、業界には大きな影響を与えています。
今回は、2022年に起きた不動産関連の出来事や話題を振り返り、総括します。
2022年4月からNHKで放送された「正直不動産」は、嘘をつけなくなった不動産営業マン・永瀬財地(山下智久)を主人公とした不動産ドラマです。嘘や偽りが横行する不動産営業の現場において、正直であることを余儀なくされた長瀬が、日々奮闘する姿が描かれています。
作品内では、賃料改定やサブリースといった賃貸業界の話題にも触れられ、一般の視聴者の間でも不動産業界独特の商慣習が広く知られることとなりました。
原作であるコミックス『正直不動産』(原案:夏原武、脚本:水野光博、作画:大谷アキラ、小学館)は、2022年12月時点で15巻まで刊行されており、累計部数は270万部を突破している人気作品です。
民法改正により、2022年4月から成人年齢が18歳に引き下げられました。
民法上の成人年齢とは、「契約などの法律行為を1人でできる年齢」「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味で、18歳になれば親などの法定代理人の同意を得なくともクレジットカードや携帯電話などの契約を1人でできるようになりました。
そして、この契約には賃貸契約や住宅ローンの契約なども含まれています。
成人年齢の引き下げによる、賃貸業界をはじめとした不動産業界への直接的な影響は小さいと考えられています。しかし、これまで以上にプロとしての自覚を持ち、適切な物件提案や案内が求められることは間違いないでしょう。
2022年4月、不動産投資における不正融資やサブリース問題など、業界内外に様々な禍根を残したシェアハウス「かぼちゃの馬車」が、アメリカの投資ファンドであるローンスターファンドグループが取得し三好不動産が運営のもと、新ブランドで再始動することが発表されました。
ローンスター社は、かぼちゃの馬車問題で被害を受けた物件オーナーが所有する1083物件、1万4,447戸を取得したそうです。「TOKYOβ(トーキョーベータ)」というブランド名で、地方から上京した若者や来日間もない留学生などに対して、仮住まいとして家具付きの物件をリーズナブルな賃料で提供する見込みです。
2022年5月18日、改正宅建業法が施行されました。
詳しくは、下記のコラムでも紹介しています。
改正宅建業法でなにが変わる?期待される業界での変化とは
ポイントとなるのは、
・押印の廃止
・電磁的方法による書類の交付
の2点です。
売買や賃貸の取引時に必要な重要事項説明書などを電子交付できるようになりました。また、宅建士による押印も不要になることから、時間や場所に制限されることなく、不動産取引ができ、不動産の流動性を促進させる観点からも期待が高まっています。
不動産公正取引協議会連合会は、改正された「不動産の表示に関する公正競争規約」と「表示規約施行規則」を、2022年9月1日から施行しました。
賃貸業界にとって大きい要素としては、最寄り駅からの物件までといった徒歩所要時間や主要なターミナル駅までの所要時間の計測方法の変更が挙げられます。
これまでは、駅から物件までの徒歩所要時間を計測する際は、物件の敷地内で一番施設に近い地点をスタート地点としていました。しかし今回の改正により、マンションやアパートは出入り口(エントランス)をスタート地点とすることが明文化されました。また、徒歩による所要時間を明記しているなら距離の表記は不要という変更も加えられました。
また、主要なターミナル駅までの乗車時間も、朝の通勤ラッシュ時を想定した計測となりました。また、乗り換えが必要な場合は、乗り換えをおおよそ要する時間も含めなければならなくなりました。
不動産広告が表示される媒体なども時代と共に変化しています。SNSを活用した不動産広告や物件PRに注力している不動産事業も増えていることから、今後はSNSでの広告表現にも気をつけなければいけないかもしれません。
2022年11月、政府は2023年度に民泊事業に参入する際の規制を緩和することを発表しました。
これまで、国交省の「住宅宿泊管理業者」への登録の際には、不動産資格(宅建士。マンション管理士、賃貸経営管理士)や実務経験が必要でしたが、指定された講習を受けることでこれらの要件が免除される予定です。
海外からのインバウンド規制が徐々に緩和され、訪日外国人の観光熱が高まりつつある中での、宿泊需要を見据えての施策となっています。
2022年度中に方針を固め、民泊運営のガイドライン改正を予定しています。