不動産業界におけるコンプライアンスチェックの重要性を考える/第五十一回
不動産IT技術研究所
さて、今回は不動産業界とITの今後をテーマにお話をしたいと思います。
ホームページを利用した部屋探しのサービスの開始は、10年以上も前になります。
某独立系賃貸サイトや賃貸系FCがサービスを始め、後発で様々なサイトが立ち上がってきました。筆者も引越しの際には利用をしたものです。ホームページによる物件公開が進んだ功績として、物件情報がより詳細にそして正確に紹介されるようになった点があげられると思います。
そして現在、ホームページによる部屋探しも、更に進化を遂げています。
従来では、検索者が条件を入れてマッチングしたものをホームページから問い合わせるといった方法が主でしたが、今では条件を登録しておくことで、マッチングした物件情報が定期的に配信されるような仕組みもあります。また、現場のお部屋を営業マンがヘッドセットのカメラをつけながら説明をし、お客様はパソコンのモニターを通じて部屋や周辺環境を確認できるサービスなども始まったようです。
いずれにせよ、お部屋探しのシーンではまだまだITを活用したサービスが増えていきそうです。
不動産会社にとって、一番重要で且つ厄介なのが鍵の管理だと思います。お客様を案内するために管理会社へ鍵を借りに行く。また、物件に案内用の鍵を保管しておくボックス取り付けるなど、これまでもいろいろな工夫がなされてきました。
そして、この鍵という“物理セキュリティ”の世界にもITの活用が始まりました。
不動産関連サービス会社が、既存のドアの鍵(サムターン)に後付するだけで、スマートホンが鍵になるスマートデバイスを開発しました。営業担当がアプリから物件を選ぶと、保有するスマートホンが一時的に鍵となり、近づけると解除される仕組みです。
長年の鍵管理の問題が解決されそうなソリューションです。セキュリティなどの運用面の課題もあるかもしれませんが、高級賃貸などでは採用されそうなサービスです。
「重要事項説明」という、ある意味“不動産業の肝”というべき領域に、ようやくITの波がやってきました。現在、国土交通省が主体となり、WEBカメラを利用した「IT重説」を実験的に行っています。
筆者が不動産会社で接客した際も、遠方のお客様との契約手続が非常にお客様の負担だと思ったことがあります。重要事項説明が遠隔でできることで、お客様の賃貸契約にかかる距離的な負担の軽減に加え、不動産会社にとっても営業範囲を広げるチャンスが出てくるのではないでしょうか。
オーナー様向けのサービスもITの活用が進んできたように思います。
従来、不動産管理会社はオーナー様へ送金明細書(時々提案書なども同封)をお送りするだけでした。しかし、今ではオーナー様向けの専用サイトを設けている不動産会社も増えてきたように思います。
専用サイトでは、物件の収支状況やクレーム対応、メールサービスなどがあるようです。今後は、このようなサイトで、税理士事務所や各種資産活用サービスとの連携を行うことで、確定申告や資産の売却などもスムーズにできるようになっていくのではないでしょうか。
世の中では「人工知能」の話題が熱いですが、近い将来不動産の一部の業務を「人工知能」で自動化して行う時代がやってくるのかもしれません。